山梨県富士吉田市に事務所を構える加々美一雄氏は、行政書士。そしてメタバースプラットフォーム「VRChat」で、定期的にイベントを開催している。外国人を対象に、在留資格や行政手続きの相談を受け付ける「VR外国人相談るーむ『キイテ』」を運営しているのだ。

毎週火曜日22時半〜23時半にオープン。自身で仮想空間を用意し、専門家として無料で相談に応じる。加々美氏に取材し、詳しく聞いた。

防音仕様でプライバシー厳守

外国人の在留資格や帰化の手続きを専門分野とする加々美氏。「キイテ」は2022年11月から毎週開催し、日本に在住、あるいは日本での生活を考えている外国人からの相談を受け付けている。8月22日の回で「39回目になります」と話す。

米国、カナダ、ブラジル、ペルー、ドイツ、デンマーク、トルコ、フィリピン、中国と、相談者の国籍はさまざまだ。誰も来ない時もあるが、平均すると1回1〜2人が相談に来る。やりとりは、基本的に日本語だ。

「ビザや在留の手続き。ちょっとした行政手続きに関する疑問。『どうやってゴミを捨てたらいいかわからない』『家賃が安い地域はどこですかね』と、生活相談も寄せられます」

相談はその場ですぐに解決するケースもあれば、数週に及ぶ事例もある。難しい内容は直接、出入国在留管理局などに連絡するよう案内する場合もある。

「キイテ」にはソファーが設置された談話室や、うどんが設置された台所らしき場所など、いくつかの区画がある。なかでも相談室は、内部の音声が外に漏れないよう設定されている防音仕様だ。室内の壁には相談時の参考になるよう、在留カードや在留資格一覧表など、在留手続きに関する資料を見えやすいよう大きいサイズで貼っている。

「日本語があまり得意でない人もいるので、資料があるとわかりやすいです」

メタバースは重要なインフラになる

加々美氏がVRゴーグルを購入し、VRChatを本格的に始めたのは22年8月。あるとき、医師や看護師らが行う「VR医療相談集会」というイベントを知った。専門家がVRChat上で無料にて相談に乗る様子に感動し、自身でも専門分野を生かした相談イベントをやろうと思い至った。3D空間の作り方も、自力で学んだ。

開始当初は「閑古鳥」状態だった。本来は有料で仕事を受ける専門分野だが、VR上での相談は無料。イベントに人が来ず「もう、やめようかな」と思ったこともあったと話す。継続のモチベーションは何か。

加々美氏はVRやメタバースが、いずれ人類にとって重要なインフラ、文化や経済活動の基盤になると考える。早い段階からVRに参入し活動することで、仕事や趣味として何か「面白いことにつながるのは」と感じているのだ。実際、「メタバースと行政書士」をテーマに、セミナーや執筆活動のオファーが来ることもあるという。

相談をきっかけに、さまざまな国の人と知り合えるのも面白みのひとつ。また「抽象的な話をすると」と前置きしつつ、こう語った。

「メタバースではユーザーによるコミュニティーが生まれます。外国人同士でさまざまな国や文化が入り混じると、人間関係やトラブルは複雑になります。メタバースという世界でさまざまな国や文化が混じったとき、何が起きるのか。そして法律的には、国境のないメタバース上でユーザーが仕事をしたら、在留資格や税金にどのような影響が出るかに興味があります」